「モバイル EC 自社サイトを軌道に乗せるまで~(1)画面設計・テスト編~」タイトル

2010年12月 通販新聞社 月刊「ネット販売」連載記事バックナンバー

携帯電話を「通販ツール」に進化させるプロフェッショナル育成講座 タイトル ビジネス感度を高めで受講のこと

連載◆70時間目
「モバイル EC 自社サイトを軌道に乗せるまで~(1)画面設計・テスト編~」

皆さんこんにちは。飯野です。今年、弊社では某洋服販売サイトの開発、3キャリア公式化、その後の運用を承らせていただくこととなりました。担当者は今も、悪戦苦闘しながらサイトを運用している日々です。その弊社運用スタッフに、サイト立ち上げのいきさつから現在の運用フェーズまでに起きたトラブル、予想外の出来事などを聞いてみました。1回目の今回は主に、画面設計とテストにまつわる出来事について紹介していきます。全て現場の声ですので、これからモバイルECサイト、中でも特に楽天やYahoo!などのモールではなく「自社サイトを立ち上げたい」と考えている方の参考になるのではないかと思います。



さらに上を目指すため、モールから自社サイトへ

今回、自社サイトを立ち上げたのは、これまで大手モールで順調に売上げを伸ばし、モール内のランキングでも何度も1位を獲得し、最優秀店舗にも選ばれてきたサイトです。モールでそこまで順調であるにも関わらず、何故わざわざ自社サイトを立ち上げようとしたのでしょうか。それには、モールで成功したサイトならではの理由がありました。


モールで店舗を展開することのメリットは何よりもまず、手軽にECを始められるということです。最初から購入システムができているので、開発の手間がかかりません。また、知名度のあまりないお店でも大手モールの中にあれば、独自でサイトを持つよりも、新規ユーザーが買い物に来てくれる可能性が高くなります。また、PCサイトと一緒に更新できるので運用の手間が少なくて済みます。


しかし、モールに入ってある程度売上げを伸ばしていくと、いくつかの壁に突き当たります。まず、モールでは基本的に、ユーザーのメールアドレスが自社のものになりません。自社ではなくモール側が管理していくため、好きなときにメールを配信したり、ユーザーの状態に応じてメールマガジンを使い分けたりすることができないのです。メールマガジンは1ヶ月に配信できる回数が決まっており、配信時間は予約制、予約枠が埋まると配信できない場合もあります。また、携帯サイトではタイムセールやテレビで出た商品をメールマガジンで放映直後にプッシュするなどリアルタイムでの戦略が効果的ですが、モールではそのようなことも制限されてしまうのです。そしてもう一つの壁は、モールはモール運営会社に払う手数料がかかるということ。自社サイトで売った方が利益率は当然高くなります。


画面設計3ヶ月、開発6ヶ月、大半はテスト期間

この某洋服販売サイトでは、これまで携帯サイトはモールでは運営していたものの、自社サイトとして一から開発するのは初めてのことでした。画面設計書も一から作ったため、そのページ数はパワーポイントの枚数にして約400ページ。既に運営中のモール店舗よりも使い勝手が悪くなっては意味がないため、3ヶ月にわたって社内で議論を重ねて作り上げました。特に力を入れたのは購入画面です。ECサイトでは売上げを上げるための要素は二つあります。一つは「商品力」。商品そのものが優れていることです。もう一つが購入画面の設計なのです(図1)。「購入画面をいかに使いやすくするか」が我々の仕事です。広告やSEOに投資する前にやることがある、と私がいつも言うのはここです。今回の購入画面設計は、ポイント制が入ることもあり、数十パターンにもなりました。


画面設計書を作ったあとは、開発です。開発には約6ヶ月を要したのですが、その半分以上をテスト期間に費やすこととなりました。決済手続きが入るショッピングサイトでは特に、テストは入念に行わなければならないのですが、加えてこのサイトでは、ポイント制や、一定の金額以上を購入すると送料無料になるという仕組みも取り入れています。そのため注文画面は数十パターンにも及び、それらが全て正しく動作するかの確認に、多くの時間を費やすこととなりました。以下にパターンの例を紹介します。


・決済方法はクレジット、代引き、銀行振込など合計5種類
・ポイントを使う/使わない
・一定の金額で送料無料になる場合
・注文後に支払い方法や住所を変更した場合……etc.


これらのパターンを組み合わせてテストを行い、携帯の3キャリアで正常に動作するかの確認を行うのに、およそ2ヵ月かかり、キャリアの審査を通過し、ようやくサイトオープンにこぎつけたのです。


想定外の動きをするユーザーに苦戦

これだけテストを繰り返しても、実際にサイトをオープンすると、想定外の購入パターンで動くユーザーが続出したのです。その一部を紹介します。


<パターン1>
ある日から、代引き手数料無料キャンペーンを開始(仮に11月1日開始とする)。あるユーザーが、10月31日23:59に注文確認画面にアクセスし、11月1日0:00時に注文完了画面に到達した。結果、画面に表示された金額と実際の決済金額に差が生じてしまった。


<パターン2>
同じく代引き手数料無料キャンペーンの期間中に、ユーザーが商品を注文し、そのユーザーが注文後の翌日、配送先の変更を行った。その際、無料であるはずの代引き手数料が発生してしまった。


<パターン3>
ポイント値引きを利用して、合計金額がちょうど0円になるように買い物をしたユーザーがいた。決済方法にクレジットカードを選んだ際、0円ではカード決済が不可となり、購入できなかった。


<パターン4>
注文の途中で端末の「戻る」ボタンを押したため、入力情報が重複するなどし、注文が完了できなかった。


上記はほんの一例です。いずれも、店舗側が目視での受注データ確認を行った際に気づいたり、迅速にユーザーへ対応を行ったりしたことで大問題には発展しませんでしたが、それでも弊社テストの想定パターンの足りなさを痛感した次第です。


また、パターン4に関してはテストパターンと言うより端末の仕様の問題です。予め注文画面に「携帯の『戻る』ボタンは使わないでください」などの注意書きをするなど、ユーザビリティに配慮することで少しでも防いでいくことが大切です。


この「戻る」ボタンの問題のように、イレギュラーなアクセスパターンによって注文ができなくなるケースは他にも考えられます。携帯のインターネット履歴のURLからアクセスする、過去のメールマガジンからアクセスする、注文途中のページをブックマークしておき、そこからアクセスする、などです。これらを全て注文可能とすることは非現実的ですし、全てのアクセスパターンを洗い出すことも難しいのが現状です。対処方法としては、ユーザーが上記の動作を行ってエラー画面を表示したときに、「申し訳ございませんが最初からお手続きをお願い致します」などの案内画面を出すようにしましょう。英文や記号のエラー文をそのまま出すことのないようにしてください。


季節商品のリンク設定ミスによる、リスクの大きさ

弊社がサイト運用をしてきた中で、売上げに大きく影響するようなミスとなったのは、季節商品のリンクを張り間違えたことです。季節商品はその名の通り、一定の時期を逃すと売り物にならなくなる商品です。そのリンクを張り間違えたことで商品が販売できず、売れ残りが生じ、翌年まで在庫をお店側で管理しなくてはならなくなりました。売上げが立たないだけではなく、在庫維持にも費用がかかります。正直、システム側の立場ではなかなか実感しにくかったことですが、季節商品の戦略はお店にとって非常に重要なのだということを思い知らされた出来事でした。


このミスが起こった原因は、別のリンクを書き換えた際に、誤って季節商品のリンクも書き換えてしまったことです。以後、リンクを書き換える際には、書き換えたリンク以外に既存のリンクも全てクリックして確認を行うこととしました。また、更新の際に毎回、既存と新規コンテンツの差分確認を行うようにしています。確認は全て手作業で時間もかかりますが、正常なサイト運営のためには、このような地道な作業が今は重用だと感じています。



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飯野勝弘プロフィール

飯野勝弘プロフィール

日本IBM㈱にて法人営業後、大手通販会社の通販部門責任者を経て、 ㈱MTI(ジャスダック上場企業)執行役員モバイルコンテンツ事業部長として、公式コンテンツ300サイト以上の立ち上げを経験。現在㈱モバイルコマース代表取締役として、全国の通販企業の携帯サイトコンサルティング業務を行う。
主業務に携帯サイトの設計企画、3キャリアへの公式承認代行(完全成功報酬制)、サイト開発、運営、売上UPコンサルティング、セミナー等 幅広く活動中。毎月4キャリア(ドコモ・KDDI・ソフトバンク・ウイルコム)へ通販企業様の公式サイト提案を行っている。数社のIT企業役員も兼務。


連絡先:東京都世田谷区用賀2-38-14 青木ビル 4階
電話03-3700-5259



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