「携帯フィルタリング原則化~コマースサイトへの警笛~」タイトル

2008年4月 通販新聞社 月刊「ネット販売」連載記事バックナンバー

携帯電話を「通販ツール」に進化させるプロフェッショナル育成講座 タイトル ビジネス感度を高めで受講のこと

連載◆38時間目
「携帯フィルタリング原則化~コマースサイトへの警笛~」

皆さんこんにちは、飯野です。今月は、これからの携帯サイト運営において避けて通れない課題、「フィルタリング(有害サイトのアクセス制限)」について勉強していこうと思います。「うちは健全なコマースサイトだからフィルタリングなんて心配ない」と思っている方、油断は禁物ですよ。



携帯フィルタリングとは?

携帯フィルタリングとは、出会い系やアダルトなど、未成年者に有害なサイトへアクセスできないようにするサービスのことです。ユーザーが携帯フィルタリングサービスに加入すると、これらの有害サイトへアクセスできなくなります。アクセスが制限されるサイトは次のとおりです(規制範囲は携帯会社によって多少異なる)。
・ 不法(違法と思われる行為、違法と思われる薬物、不適切な薬物利用)
・ 主張(軍事・テロ・過激派、武器・兵器、誹謗・中傷、自殺・家出、主張一般)
・ アダルト(性行為、ヌード画像、性風俗、アダルト検索・リンク集)
・ セキュリティ(ハッキング、不正コード配布、公開プロキシ)
・ ギャンブル(ギャンブル一般)
・ 出会い(出会い・異性紹介、結婚紹介)
・ グロテスク(グロテスク)
・ オカルト(オカルト)
・ コミュニケーション(ウェブチャット、掲示板、IT掲示板)
・ ライフスタイル(同性愛)
・ 宗教(伝統的な宗教、宗教一般)
・ 政治活動・政党(政治活動・政党)
・ 成人嗜好(娯楽誌、喫煙、飲酒、アルコール製品、水着・下着・フェチ画像、文章による性的表現、コスプレ)

ここまで見ると、上記に当てはまらないコマースサイトなら何も問題はないような気がしますが、実は大きな落とし穴があるのです。

落とし穴(1)初期設定でフィルタがONになる。

現在でも、フィルタリングサービスは携帯各社とも提供中です。キッズiモード(ドコモ)、EZあんしんアクセスサービス(KDDI)、Web利用制限(ソフトバンク)などがそれです。これまでは、未成年者が携帯を契約する際に、オプションでフィルタリングサービスに申し込むかどうかを選択することができました。しかし今年の夏以降は、既存契約者も「オプションではなく初期設定からフィルタリングがONに」なります。未成年者、つまり10代までの契約者はすべて自動的にフィルタリングがかかります。日本の10代の人口は1,258万人(2007年1月1日現在国税調査より)、10代の携帯電話保有率は約80%(弊社調べ)なので、10代で携帯を持っているのは約1,000万人になります。そのうち、親名義と自分名義が半々と仮定し、自分名義の契約者がすべてフィルタリング加入状態になると、約500万人の未成年の契約者が、これまでアクセスできていたサイトが突然アクセスできなくなる可能性があります。親名義のユーザーも、親がフィルタリングに申し込んだとすると、500万人+αのユーザーが、フィルタリング加入状態になることになります。若者向けサイト運営者にとっては死活問題となります。

落とし穴(2)自分で解約できない。

さらに面倒なことに、このフィルタリングサービスは未成年者自身で解約ができません。契約が自分名義であっても親の同意が必要で、携帯ショップへ足を運ばなければ解約できないことになっています。500万人が携帯ショップへわざわざ足を運ぶでしょうか?そう考えると、今夏サービスが開始されたときの、一部のサイトへのアクセス数激減は避けられません。

落とし穴(3)微妙なジャッジは無し。すべてダメ。

フィルタリングで接続不可になった画面

ではこの「有害サイト」をジャッジしているのは誰なのかというと、ドコモ、KDDI、ソフトバンク、ウィルコムの主要4キャリアがすべてのジャッジを一つの会社に委ねている状態です。実際にジャッジをしている人々が、本当にそのサイトが有害なのかどうか、微妙なジャッジまでできるかというとそうではありません。前出の項目分けに沿って、サイトを分類するだけです。一般サイトも含めて何十万もある携帯サイトを、一つ一つ細かく見ていくことは不可能なのです。

具体的にフィルタリングの規制にかかるサイトをいくつか挙げてみます。まずグラビア、競馬、パチンコ、恋愛系コミックなどのサイトはTOPページからアクセスできなくなります。スポーツニュースも一部にグラビアがあるだけでNGです。ミクシィ、GREE、イクセンなどのブログやSNSサイトはすべてNGです。「コミュニケーション」に分類されるという理由で、都道府県が運営する防災ブログや、学習塾の予約サイトまで見られなくなります。携帯会社から承認を得て運営している公式サイトでも関係なく、規制がかかります。

コマースサイトではamazon.co.jpのレコメンド機能。これがアクセスできなくなります。ユーザーの投稿型であるためコミュニケーションに分類されるからです。レコメンド機能があるのはもちろんamazon.co.jpだけではありませんね。似たような機能があるサイトはほぼNGとなるでしょう。下手すると、サイトの一部にレコメンドや友達におすすめ機能があるだけでトップページからNGとなる可能性もあります。オークションもNGです。ユーザー同士のやりとりがコミュニケーションに分類されるからです。

それもこれもすべて、一つの会社の人間の判断次第というのが現状です。基本的に、サイトを運営する企業から直接、フィルタリング会社へ交渉することはできません。交渉できるのは携帯会社のみです。携帯会社に承認されていない一般サイトは、なす術がないといっていいでしょう。そのため現在、携帯サイトを運営する各企業からは「規制が厳しすぎてサイトが運営できない」「原則化は急すぎる」といった反発の声が挙がっています。


コマースサイトへの影響は?対応策は?

前出のレコメンドや掲示板機能がないコマースサイトでも、フィルタリングの影響を受けます。

まず単純に、ターゲットが未成年者の商品を扱っているサイトは携帯での売り上げが低下します。未成年が携帯サイト自体にアクセスする機会が確実に減るからです。公式サイトであれば、サイトの中にフィルタリングで見られない部分のあるサイトは、週間iガイドなどのキャリア広告に取り上げられる機会も減ると考えられるので、ますます未成年のユーザーが減少します。

また、自社のサイトがフィルタリングの規制にまったく当てはまらなくても、広告先の一般サイト等がフィルタリング規制に該当する場合、そのサイトからの流入が激減します。特に広告先が未成年のターゲットサイトであれば大打撃となるでしょう。逆に自社サイトから他サイトへ誘導する場合でも、リンク先のサイトがフィルタリング規制で見られなくなれば、思わぬクレームの嵐となることでしょう。そういった、今までまったく気を使わなくて良かった方面への注意が常に必要となるため、サイト運営の負担も大きくなります。

こういったトラブルを回避するための対応策としては、「フィルタリングに引っかからないサイトを作る」しかありません。しかしそれでは、多くのサイトが無難すぎてつまらないものになってしまいます。レコメンド、友達へのおすすめ、オークション、ユーザー投稿などはすべてフィルタリングの対象になってしまうからです。しかしそれでは商品が売れなくなります。いっそ未成年のユーザーは切り捨てるか、それとも無難なサイトで生き残るか。そんな選択に迫られる日も遠くはないかもしれません。

それと大事なのは、常に「新しい情報をキャッチする」ということです。インターネットで「携帯フィルタリング」と検索すれば毎日ニュースが出てきます。まずは情報収集から始めて、できる限りの対策を考えていきましょう。



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飯野勝弘プロフィール

飯野勝弘プロフィール

日本IBM㈱にて法人営業後、大手通販会社の通販部門責任者を経て、 ㈱MTI(ジャスダック上場企業)執行役員モバイルコンテンツ事業部長として、公式コンテンツ300サイト以上の立ち上げを経験。現在㈱モバイルコマース代表取締役として、全国の通販企業の携帯サイトコンサルティング業務を行う。
主業務に携帯サイトの設計企画、3キャリアへの公式承認代行(完全成功報酬制)、サイト開発、運営、売上UPコンサルティング、セミナー等 幅広く活動中。毎月4キャリア(ドコモ・KDDI・ソフトバンク・ウイルコム)へ通販企業様の公式サイト提案を行っている。数社のIT企業役員も兼務。


連絡先:東京都世田谷区用賀2-38-14 青木ビル 4階
電話03-3700-5259



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