「外部連携による集客(3)」タイトル

2006年8月 通販新聞社 月刊「ネット販売」連載記事バックナンバー

携帯電話を「通販ツール」に進化させるプロフェッショナル育成講座 タイトル ビジネス感度を高めで受講のこと

連載◆18時間目
「外部連携による集客(3)」

皆さんこんにちは、飯野です。「外部連携からの集客」の実例として、今回はカタログを軸にアパレル通販を行う住商オットーのイー・コマース部の八木部長に、現在のモバイルサイト運営のお話をお聞きします。カタログ通販を中心に展開している同社がモバイルコマースに参入した経緯や、運営している中で発見したことや悩みは何だったのでしょうか。



1.受注方法をマルチチャンネル化

2000年 1月 インターネット(PC)通販参入
2001年 7月 モバイル勝手サイト開設
2005年12月 モバイル公式サイト開設

住商オットーはカタログ通販における顧客分析を行っていくうちに、従来の電話・はがき・FAXの注文ツールを併用する顧客は、「顧客単価」や「利益貢献度」において重要な存在だと分かってきました。そこでイー・コマース部としてはより受注手段を広く持つために、パソコン(PC)によるインターネット通販をはじめ、モバイルサイトを開設することにしました。いわゆるカタログを主軸とし、受注方法のマルチチャンネル化を行っていったということになります。

上記の開始時期を見ても、モバイル勝手サイトの開設時期は通販業界でも早い段階だったといえます。その分、当初はモバイルサイトも使って受注チャンネルを拡大した方がいいという肯定的な意見がある一方で、モバイル上でファッション性の高い商品を、白黒写真を使ってどこまで訴求できるのか?という疑問があったりと、社内でもいろいろな意見が出たようです。そこでさまざまな角度から議論を重ねた結果、まずは少ない費用でテスト規模から始めてみようという経営判断に至ったようの立ち上げはまさにチャレンジだったと言えるでしょう。

2.モバイルコマース黎明期にサイト開設

モバイルサイトを開設してはみたものの、やはり売り上げは思うようには伸びず、当初は苦戦したようです。イー・コマース部としてはここからが踏ん張り時期だったといいます。なぜかというと、やはり会社として売り上げの上がらない受注ツールは上層部からいろいろなプレッシャーがかかるためです。  しかし「それを耐え、今後のモバイルの可能性を信じていたマネジメントや現場スタッフの踏ん張りがあり、そこであきらめなかったことが結果として今につながっている」と八木部長は言います。

「数字(売り上げ)がなかなかついてこなかったこと」。一番苦労した点はこれに尽きるそうです。この八木部長のコメントは、現在の他社のモバイルサイトにも当てはまります。もっというならば、PCサイトにも当てはまるのではないでしょうか。

ネットに出店すれば簡単に売れると信じている方が未だにいますが、通常はサイトを開設する労力よりは、1年間運営して、想定売り上げや利益を上げる方が何倍も苦しいものなのです。

ましてや住商オットーのモバイルサイトのオープンは本当にモバイルコマースの黎明期にあたり、まだまだ参考になるような他社サイトがなかった時代です。お手本がない中で毎日試行錯誤し、本当に苦労したはずです。

3.売り上げの伸びはモバイルがダントツ

モバイルサイトの公式化を狙ったのは、お客のアクセスのしやすさも理由としてあったようです。やはり勝手サイトのようにURLをいちいち入力していく手間よりは、キャリアのメニューから辿った方がはるかに、利用へのハードルが低いですから。また公式のトラフィック数も、新規顧客の開拓には魅力的だったようです。

公式化はこのようにメリットが大きい分、同時にキャリアに勝手サイトの運営時にはなかった業務が増えるようになりました。

特にシステム対応が大変だったようです。毎月発売される新端末や、次から次へと変更される技術仕様を漏れなく追いかけるため、システム部門のリソース調整が1つの課題となっています。今はそういった業務をモバイルコンテンツプロバイダーにアウトソーシングしている企業も多くなってきており、アウトソーシングはリソース調整の有効な手段と言えます。

さて、住商オットーのモバイルサイトの実績としては、05年7月~12月の勝手サイト期間と06年1月~6月までの公式化期間の比較で、新規購入者による売り上げは2倍以上になったとのことです。また、「モバイルから独自で入ってくる新規ユーザーの売り上げ」と「カタログの受注端末としての売り上げ」の比率は2対8。依然、カタログからの受注端末としての売り上げが高いですが、伸び率はモバイル単独の方がダントツとのことです。

またモバイルでの運用を行っている今でも、他の注文ツールからの売り上げはどれも落ち込んでいないそうです。これには驚きました。通常、ネット系の受注ツールが発達すると、FAXやはがき注文が減る(=ネットに代替される)傾向があるからです。

しかし、今回のように既存ツールの比率が変わらず、ネットのツールによる受注が伸びているこの傾向は、住商オットーがもともと持っている客層が、FAX やはがきといった従来の注文ツールを好む顧客が多いということが理由に挙げられます。つまり、ネットで注文するお客は、そのまま新規顧客になるわけです。この「互いに食い合わない」顧客の獲得は、同社の大きな強みといえるのではないでしょうか。

4.「ベンツ」プレゼントキャンペーン

集客を強化するため、さまざまなキャンペーンを行っています。最近では、応募者から抽選でベンツ1台をプレゼントというキャンペーンを行いましたが、応募者総数の約40%がモバイルからの応募だったとのこと。全売り上げに占めるモバイルの構成比はそこまで大きくないので、簡単にいつでもどこでもコンタクトできるツールという利便性を考えると、やはりモバイルは「コンタクトポイントとしてリーチがある」という結論に行き着きます。

モバイルでの集客策として注目されているQRコードについては、慎重に対応しているようです。何と言ってもファッションのカタログはビジュアルが命。現在は一部のページでは使っていますが、いくらQRコードでアクセス数が上がるからといっても、全ページに載せるわけにはいきません。「住商オットーブランド」の品位や品格を保っていくためには、どんなに便利な販促ツールでも安易に使うことはせず、あくまでも「オットー流」に展開していくことが重要だと考えているそうです。

しかし、モバイル全売り上げの30%がQRコードからと、QR経由の売り上げが伸びているのも事実です。この点を踏まえると、クリエイティブ面とCI(コーポレート・アイデンティティ=企業イメージ)とのバランスを考慮しながらの対応が今後の課題となりそうです。

5.目標は売り上げ2倍

当面の目標は、「PC+モバイル」の売り上げを現在の2倍にすることといいます。目標達成のために、購入までの画面遷移をもっと簡単にするなどさらにユーザビリティーを向上させていく方針です。
八木部長は、モバイルサイトを運営する上での今後のビジョンとして、以下のポイントを挙げます。

図3)カテゴリの表示

1)お客の「質」と「数」の見極めが大事

今後もお客様の「数」は追い求めていきますが、モバイルサイトに関しては、与信を含め「質」をしっかり管理していきたい。モバイルはコンタクトポイントとしてのメリットはある反面、与信管理のリスクが大きい市場。サイトを息の長いものにしていくには、しっかりとした債務管理が必要だと考えている。

2)40~60代のお客をビジネスチャンスに

中長期の課題として、現在の40代、50代、60代のお客様を、いかにモバイルやPCに誘導できるかということ。この年齢層は近いうちにきっとモバイルを使い始めるはず。若い世代だけでなく、上の世代にも魅力的なサービスを提供できるモバイルサイトにしていくことが今後の目標。

今後ますますモバイルサイトを盛り上げていこうとしている同社に、成功法則が少しずつ見出されてきたようです。


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飯野勝弘プロフィール

飯野勝弘プロフィール

日本IBM㈱にて法人営業後、大手通販会社の通販部門責任者を経て、 ㈱MTI(ジャスダック上場企業)執行役員モバイルコンテンツ事業部長として、公式コンテンツ300サイト以上の立ち上げを経験。現在㈱モバイルコマース代表取締役として、全国の通販企業の携帯サイトコンサルティング業務を行う。
主業務に携帯サイトの設計企画、3キャリアへの公式承認代行(完全成功報酬制)、サイト開発、運営、売上UPコンサルティング、セミナー等 幅広く活動中。毎月4キャリア(ドコモ・KDDI・ソフトバンク・ウイルコム)へ通販企業様の公式サイト提案を行っている。数社のIT企業役員も兼務。


連絡先:東京都世田谷区用賀2-38-14 青木ビル 4階
電話03-3700-5259



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